バレンタイン
男子も女子も浮かれる今日この頃。愛しの人からの贈り物に思いをはせる者様々で、ホグワーツは一部を除き微妙なピンク色の空気が流れていた。
その中で、一人、必死な紫がかった青色の空気をまとった少年が廊下を全力疾走していた。その姿は、まるで何かから逃げているようだった。
否、逃げているのだ。
少年の名前は・アルバス・。
所属寮はグリフィンドール、ミドルネームから推測できるように、これでも一応、ダンブルドアの孫である。
彼は逃げていた。
それはもう、いろんな物から。
「! 何で逃げるんだおれの!」
「ちょっとうるさいよシリウス! 大体ぼくのが何時から君の物になったんだい!?」
の後を追いかける二つの影。その速さはまるで飛ぶが如し。
サラサラの黒髪をなびかせながらを捕まえようとしているのはシリウス・ブラック。
鳶色の髪と瞳をした少年がシリウスに肘鉄をかましても、シリウスは自称からの愛の力で耐えている。
「大体シリウス! 君が追いかけてるからが怖がって逃げるんだよ!」
「おれのせいかよ!? はきっとお前を怖がって逃げてるんだ!」
何かとシリウスを邪魔する少年、彼はリーマス・J・ルーピン。
勝手な事を言い腐っているこの二人の言葉に反撃して口を開こうものならスピードがダウンして捕まる事は目に見えている。
歯を食いしばって、は彼らから逃げるために走り続けた。
何で男の自分が男から逃げているのだろうか。しかし、彼にその疑問は既にない。
あるのはただ一つ。
捕まれば明日はない。具体的にどうないのかは判らないが、何だかそんな気がする。
視界の端に同寮のジェームズ・ポッターとリリー・エバンズを捕らえた、馬鹿甘い空気を纏った彼らはとても幸福そうだった。
「バレンタイン・デーなんぞ消し飛べ!」
非モテ層が放つ言葉を叫んだ所で彼女のいない男共からのやや同情じみた声援が飛ぶ。飛ぶのはいいが、アレよりはない方がマシだと呟いた屑は後に制裁する事とした。
しかしホグワーツは共学のはずなのに何故男ばかりなのか、後ろの馬鹿二人が清らかで純粋な男女交際の愛に目覚めて欲しいと切に願う。
今日に限った事ではないが、は何度もそう思った。
しかし現実から目を背けてはならない。
今の現実。
それは、そう、スパートをかけた友人から全力を以って逃げ切ること。
はひたすら逃げる。
今を生きるために。
さて、どこに逃げようか。
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談話室
... Sirius
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競技場
... Remus
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図書室
... Severus
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中庭
... Peter
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大広間
... Arthur
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保健室
... Frank
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空き教室
... Lucius
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禁じられた森
... Voldemort