ストロベリー・オムレット
僅かな光を頼りに辺りを観察するが気休めの絵画さえ存在しない、優美とは程遠い研究室のような殺伐とした場所。黒板には細かく乱雑な白い文字が並び、机の上には本や紙の束、用途の判らない実験道具の類が雑然と積まれている。
部屋の隅に膝を抱えて蹲って、時計の秒針が動く音を意識の外に弾きながら、たった1つしかないドアを凝視して耳を澄ました。
これ以上、逃げる事が出来ないのは承知している。自分から、袋小路に逃げ込んでしまったのだ。それでも逃げる選択しか考え付かず、けれど姿くらましも出来ないまま、やがて近付いて来た足音に身を固めながら、開いてしまったドアの前、光の中に佇む黒い影に歯を食いしばる。
と、現在のレギュラス・ブラックがどのような心境なのか想像してみたが、殺人鬼や悪霊に追われた一般人のホラーな内心を綴ったものになってしまう事に今更気付いた。確かに私も一応は化物に分類されている身の上だが、それでも辛うじて人間であるし、レギュラス・ブラックに酷い事をしようという考えは今の所ないと心の中でのみ言い訳する。
オブラートの研究用に使用している会議室の隅で飢えた肉食獣に追われた小動物のように怯えている少年の名を呼ぶと、薄闇の中でも肩が反応した事が判った。
全く、メルヴィッドといい、この子といい、どうしてここまでいじらしいのだろうか。
「レギュラス、10日以上もお会いする事が叶わなかったので、そろそろ貴方の顔を見て安心したいのですが」
足を擦るようにしてゆっくりと近寄り、汚れた冷たい床に腰を下ろして不健康な触り心地の頬に触れた。半分は言葉で、もう半分は力で顎を上げさせて、予想していた通りの酷い顔をまじまじと拝む。
化粧で誤魔化している痩けた頬と目の下の隈、腫れぼったい瞼、艶の失せた髪に覇気の消失した表情。全く、どうしてこの子はあの程度の事でこれほどまで心を痛めてくれるのだろうか、偶に思ってもみない方向で頼りになるのだが、矢張りこのままブラック家当主として君臨させるには心配だ。
「」
「はい」
「絶対に僕を、赦すな。たとえ、何があっても赦してはいけない」
「久し振りにお会い出来たのに、開口一番に随分なお言葉ですね。知っていますか、私は理不尽な懇願をされるのは大好きですが、理由もなく命令されるのは嫌いなんです」
すっとぼけて色々と愚痴を聞いてあげてもいいが、いい加減シリアスな雰囲気はお腹一杯になったので堂々と断る。
そもそも、この子の場合は先程と違って長引かせても碌な事にならない。抜きん出て優秀だった当主の長子で次代の地位を争いながら勝ち取ったアークタルス・ブラックと違い、次男の立場でありながら物心が付いた後に地位が当然のように譲られたレギュラス・ブラックはその微妙な境遇から他者への心遣いがある為か、このような状態に嵌り込むと変な風に足掻き中々抜け出さないのだ。
そこは底の見えない泥沼だと、抜け出さない事には始まらないと、きっとメルヴィッドやアークタルス・ブラックは言ったのだろう。半純血の私の事を気にする必要はないと屋敷の肖像画達も繰り返し告げたに違いない。
けれど、彼の心を抉り、雁字搦めにしたのは、以前吐いてしまった己の失言と、私が怪我を負った事実と、愉快な悪意と冷えた正論が混ぜ合わされたエイゼルの言動だった。
この子の思考は基本的に後ろ向きで、そして空気を読む気質なのだ。要は。
仲間内のそれならば、まだ好きにしていい。けれど大家の当主なんて立場の人間に同士は存在しない。存在するのは己の下位に位置する守るべき者達か、八方を取り囲む敵だ。恐らく私の立ち位置は下位の仲間だが、どちらにしても空気なんて読んだ所で事態は改善されない。現当主様がそれでは困るが、しかしヴォルデモートに殺されに行けと言われるのはもっと困るので、思考と気質の変動を読みながら進めていこう。
「僕は、君に死ねと言った。君を殺そうとしたんだ、ダンブルドアから盗んだあんな下らない言葉に惑わされた妄想の中で、そして現実で」
「構いませんよ」
あっけらかんと言い放ち、まずは重く淀んだ空気を吹き払った。
一瞬後に生まれた虚の隙間で無邪気に笑って見せればレギュラス・ブラックは目に見えて動揺する。
「構わないって。なんで、そんな」
「愛する方々の為ならば、私は喜んで命を差し出しましょう。死への恐怖がないとは言いません、けれど、たかがその程度の事に怯み愛しい人を亡くす方がより恐ろしい」
子供の笑顔のままリチャード・ロウには間に合わなかったと続ければ、暗がりの中で灰色の目が見開かれた。表情はそのままに、口調を少し強くする。全く手間がかかって仕方がないが、手のかかる面倒で可愛らしい子は大好きなので私なりの楽しさはあった。
「もう二度と、あのような勝手はさせないと決めていました。ずっと前から、確固たる信念と覚悟で決めていたからこそ、実行したんです。たとえ、私がそうなって喜ぶのは私の事を思ってくれている方ではなく、私の敵だけだと理解していても、それでも私は」
「違う、違うんだ。そんな覚悟なんて要らない。君に立ち向かって欲しいんじゃない、逃げて欲しいんだ。敵からも、僕のような酷い人間からも。きっと僕は、また無意識に君に死んでくれと言ってしまう。君を死の淵に立たせてしまう」
「どうか、言って下さい、自分の為に死ねと。レギュラスへならば、私は喜んで血肉を差し出せる」
しかしこの言葉、全くの嘘、という訳でもない。
血肉は差し出すが魂まで差し出す気はないし、大半の場合は私よりもメルヴィッドの駒である彼を生き延びさせた方が利があるので、寧ろ8割程度は真実だ。
周りくどいのは仕方がない、アークタルス・ブラックのようにブラック家の当主だから庇うのが当然だろうと本心で言い切る事が出来ればどれほど楽なのだろうか。今にも泣きそうな顔をしているこの子にそんな事を言ってしまっては最後、レギュラス・ブラックではなく所詮ブラック家当主が大切なんだと悟り、私達の仲は破綻してしまう。対ヴォルデモート回避には成功するが、それ以外が全滅しては元も子もない。
私を戦闘に駆り出すのを本気で嫌がっているのでこの辺りで引いてもいいが、私から楽な選択へ誘導するよりも彼に決めさせる方が後々楽になるだろう。ならば無理にでもごり押すしかない、有耶無耶にして逃がした所で後で拗られるのは目に見えていた。
震える細い手を取り、冷えた手の平を胸に触れさせる。この体が女性であったら紛うことなきセクハラだが、よく考えてみると男性同士だって立派にセクハラである。
「どうか、私の命を預かると、言って下さい」
「い……言えない。無理だ、僕にはそんな事出来ない」
「お願いです。これが私の願いなんです、レギュラス」
「嫌だ、無理だよ、そんな。それが君の望みだとしても、僕には出来ない!」
「貴方達の為ならば命だって張れると言った時、貴方は笑って受け入れてくれました。なのに、今になって何故」
「本気だとは思わなかった! 話の流れに任せた冗談だと受け取ってしまったんだ、君がこんな目に遭うなんて考えもしなかったんだ! ……僕は最低な人間だ、君は何時だって嘘を吐かなかった、何時も誠実だったのに、僕がそれを受け取らずに駄目にした」
「レギュラス、それの何がいけないのですか。何も駄目になどなっていない。貴方が生きてさえいれば、私の言葉がどう捉えられようが構いはしないのに」
「僕が嫌だ! 僕が、嫌なんだ。お願いだ、頼むから、もう止めてくれ」
怯えるようにかぶりを振って、指先は更に冷たくなっていた。本気で怯え、嫌がり、恐慌状態に陥り始めているのでこの辺で止めてあげよう。あまり虐めが過ぎると必要以上の距離を置かれてしまう可能性もあった。
さて、では怯えて可愛い声で鳴いている仔犬を言葉で追い込む作業は切り上げ、仕上げに無意識でもそんな事を口に出せないよう呪っておこう。大丈夫だ、別に杖があろうがなかろうが、言語が通じる人間を呪うのは然程難しい事ではない。
「レギュラスが傷付くのは、私も嫌です。私はただ、大切な人を守りたいだけなんです。けれど、それでも、納得した訳ではありません。だから無意識で構いません。貴方がそう望むのなら、何時でも私は」
この命を差し出そう、と言外に告げれば、元々色の薄かった肌から完全に血の気が引いていく。これで、無意識だろうとレギュラス・ブラックは私に死ねと言えないだろう。
サングラスに隠された安物の義眼が収まる空ろな眼窩が、薄い肌と肋骨の下で確かに脈打つ心の臓腑が、血と呪詛を撒き散らしながら疾走する小さな背が、はにかみながら触れ合った手の平の暖かさが、焼き付いてしまった思い出として彼の脳と心を締め上げるから。
もしも、これで意識して私に死ねと言えるのならば、彼は上に立つ人間として最低限の事をクリアしている駒であるし、逆にまた無意識に私に死ねと言って来たのならば、即刻切り捨てるべき記憶障害持ちの塵芥だ。
果たして、この子はどちらに転ぶのだろうか。否、もしかしたら私の予想を超えた言動を取るかもしれない。この子にとっての全ての原因、自責の念に囚われる切っ掛けとなった、あの予言をダンブルドアの頭の中から盗み見た時のように。
そうなれば更に、面白い事になる。予定外の事態打開は苦手だが、それから引き起こされる混沌とした空気は好きなのだ。矛盾しているようだが、人間は心を持ち感情で動く矛盾の塊なので、色々言われている私だってその辺りはちゃんと人間らしい。
「なんで、そんな事を言うんだ。が僕を想ってくれているように、僕もが大切なんだ。なのに、どうして」
「ごめんなさい、酷い事を言って。でも、それでも私は譲れないんです。そうしなければ、私は私を保つ事が出来ない」
真っすぐに、力強く、幼いながらも積み上げられた経験から出した結論だと乱雑に叩き付ければ、レギュラス・ブラックは今にも泣き出しそうな、辛そうとも悲しそうとも捉えられる感情を露わにする。
この複雑に見えて単純に過ぎる感情は、もしかして、在りし日の自分自身と重なったのだろうか。勝手に作り上げた脳内の虚像、闇の帝王たるヴォルデモートの言葉を考えもせず深くまで飲み込んで、傀儡となっていたあの頃の彼自身に。
私の導き出したそれを、しかし否定する事が出来ないのだろう。自分が基準とする考えと異なるもの全てを否定対象にする程、彼はもう子供ではない。かといって、全てを諦めて受け入れられる程、老いてもいない。
ではどうなるかといえば、まあ、若く情熱的な青年はこうなるだろう。
「なら僕は……君を、君の思想を変えてみせる」
「とても、酷い事を言うんですね。私も貴方も一方的に押し付ける、傲慢な人間だ」
「僕は逃げない。嫌なら君が逃げてくれ、出来るだけ、遠くまで。でも、は理不尽な懇願は好きなんだろう?」
「ええ、ですがその内容を承諾するとは一言も」
落ち切った所からの反動なのだろうか、レギュラス・ブラックは生まれ持った顔立ちを最大限に活用しながらサディスティックに目を細め、冷え切っていた指先が感情の高揚によって熱くしながら私の肌を擦った。これも勿論セクハラであるが、この子は美形であるので不問にしよう。但し美形に限るという魔法の言葉は、時と場所を選ばず有効である。
しかし何故、この子もあの子達も、揃いも揃って私の周囲にたむろする若者はこれ程までに老いた心を掴んで離さないのだろうか。10代から20代にかけての立派な青少年達なのだが、耄碌した私には庇護欲を刺激する鳴き声を放ちながら足元にじゃれついて来る子犬や子猫達に見えて仕方がない。
鼓動を捉えていた指先が皮膚を離れ、サングラスの下で緩んだ目元をゆっくりとなぞる。普段から懐いてくれている子犬が鼻先を突き合わせて来た幻覚が見えたが、ちゃんと幻覚と判断出来ているので私は正気だ。
「詐欺紛いの事を言うんだね、悪い子だ」
「凄いでしょう、私だって頑張れば悪い子になれるんですよ」
どの辺りが凄いのかは私も全く理解出来ない意味不明の発言が、取り敢えず今のやや張り詰めた空気を転換させる為に胸を張りながら無邪気な演技で言ってみせると、先程のアークタルス・ブラックによく似た笑みを浮かべていた孫は見事に引っ掛かり、纏っていた毒気を霧散させてしまう。
「ふふ、それは凄いな。頑張らないと悪い子になれないのはの才能だよ」
「……レギュラス。当たり前ですが、冗談ですよ? 私、普通に悪い子ですからね?」
「そう? ちょっと変わった子だけど、僕は君よりも良い子を知らないよ。でも君がそう言い張るのなら証明して欲しいな、君が普通に悪い子なら僕の嫌がる事を今すぐ出来るよね」
「今、この場でですか?」
場の空気は確かに変化したが、随分妙な方向に変わったものだ。
しかし、レギュラス・ブラックの、嫌がる事か。
改めてそう言われると、非常に困る。否、考えとしては一応あるのだ、この子に生きた巨大蛸2匹をけしかけて例の浮世絵みたいにするとか、クリーチャーを呼び出して嬲り殺すとか、アークタルス・ブラックを最新式の拷問にかけるとか、だ。
無論全力に過ぎる嫌がらせなので、幾らなんでもこれを選択肢に入れる程、私も馬鹿ではない。兄のシリウス・ブラックの話題を出してもいいが、あまり笑える話でもないし私も面白くない。何か軽い言葉、アークタルス・ブラックに対して告げたおじいちゃん嫌いの一言のようなものがあればいいのだが、適当なものを思い付けなかった。
では、考え方を少し変えてみよう。レギュラス・ブラック個人と考えるから駄目なのかもしれない。アークタルス・ブラックのそれを考えた時のように、若い男の子が言われて嫌がる事を考えればいいのだ。
「では、レギュラスの事はこれからレジーとでも呼びましょうか」
青年間近の、微妙な年頃の男の子ならば、舌に残るような可愛い愛称で呼ばれる事を嫌うだろう。実際、メアリー・ガードナーに勝手に付けられた愛称で呼ばれたメルヴィッドはドス黒い殺気を私に向けた前科があった。
このような経験からそれなりに自信を持って出した解答ではあったが、所詮老人の浅知恵など現代の若者には通用しないのだろう。あっさりと許可を得てしまった。
そもそもこの子は、常人と比較すると感性がちょっと変わっていた事を今更思い出す。私が彼を子犬と見間違えてしまうように、彼は私を弟のような存在ではなく小動物扱いしているのだろうか。祖父であるアークタルス・ブラックは私の事を孫か自分の嫁にしたいと、割りとではなくかなり本気で考えているようだが。
「後悔しても知りませんよ、本当に皆の前でレジーと呼びますからね。奥様や子供や孫や曾孫が出来ても、ずっとレジーと呼び続けますからね。レジナルドさんですねって会う人会う人に勘違いされてしまえばいいんです」
「はどうしてそんなに可愛いのかなあ」
頬に触れていた手を背に回し、同年代の子供と比較すれば大きいが、それでも少年らしいこの体を抱き込んだレギュラス・ブラックは吐息が触れ合う程近い距離でふと、嗤う。
直前までの空気に見合わない、粘着質な、冷たい微笑みだ。
私は、この嗤い方をする人間を知っている。毒の有無という違いはあれど、絵画だけの存在になったこの子の母が、同じ笑みを向けていた。
「ねえ、君はとても優しくて、素直で、可愛らしい子なんだ。だから、寂しい事を言って、自分自身を削って、独りで生きていこうとしないで。君はずっとこのまま、可愛らしいまま僕の側に居て。僕をレジーと呼び続けて。他には何もしなくていい、一緒に生きて、名前を呼んで、側にいる、それだけでいいんだ」
成程、遠くへ逃げて欲しいだの自分を赦すなだの言っていたが、そんなものは耳障りのいい建前に過ぎず、結局の所はこれがこの子の本心か。
家族が欲しいのだ、この子は。10年以上前に失ってしまった、否、初めから手にしてなどいなかった、絵に描いたように幸せな家族が。
物静かで温和な祖父と、聡明で優しい兄、快活で自由な弟、仲の良い使用人。時に優しく諭し、時に厳しく叱咤してくれる愛を持つ両親はいないが、それでも私達はこの子にとって理想の形に近い家族なのだ。
気持ちは判る。今でこそ血の繋がった家族が傍にいるが、幼く孤独であった私も家族が欲しかった。甘くて優しい夢に浸かりたかったし、リドルのお陰で浸かる事が出来た。ほんの僅かな間だけでも。
可哀想に。
祖父も兄も弟も、内心は彼の妄想とかけ離れた思想を持ち、愛という名の当たり障りない目隠しを用いた利害関係を結んで行動しているというのに。盲たこの子には足元に横たわるそれが見付けられない。
「だから今度は、僕に君を守らせて」
ああ、駄目だ、歪んでしまった。失敗だ。
この子の脳味噌の中はパステルカラーなお花畑色の夢が大半を占拠している。こんな夢見心地な頭のままブラック家当主の座に納まり強大な力を振るい始めたら最後、彼の過剰で不必要な善意が原因となり私達の計画が破綻する可能性が出てきてしまう。
相手が喜ぶと思って、直前まで何も知らせず、密かに行動に移す、この三拍子をやられると最悪だ。善意から起こした行動と結果の拒否や否定は理不尽な怒りを呼び、事が起こる前に潰そうにも悪意がないので反動の少ない初期段階では捕捉も難しい。
アークタルス・ブラックから屋敷を引き継いだ時には然程波風が立たなかったが、だからといって次も上手く躱せるとは限らない。しかし、捨てるにはあまりに惜しい素材、ヴォルデモートやダンブルドアに反抗した時のように、レギュラス・ブラックは土壇場で自分の意志を貫き相手の虚を突く強力なカウンターを繰り出す資質がある。
ならば、メルヴィッドと、その後アークタルス・ブラックに相談し、ある程度使えるように再教育を施すべきか。私では無理だ、甘やかすか滅ぼすかという両極端の加減しか出来ない私の気質は全くの不向きである。
「もう二度と、君が傷付く姿は見たくないんだ」
ああ、駄目だ。私が駄目にしてしまった。
方向的には正しいが、それ以外を軒並み間違えた。嫌な場所へと転がっている、混沌とはしておらず全く楽しくも面白くもない、純粋でひたすらに真っ直ぐな方向へ。
どろりと冷えた美しい笑みのまま、レギュラス・ブラックは私の頬に顔を寄せて何度も口付けをする。
どのような感情が含まれていようとも、彼の唇は当たり前のように温かかった。