馬鈴薯の青椒肉絲
予想していた言葉に首を傾げる演技で応えつつ、リビングテーブルを挟んで正面に座る2人の刑事を見つめると、主だった会話を担当する役割の老刑事が申し訳なさそうな表情で何でもいいので提供してくれないかと続けた。
「捜査中の事件で必要になったんだが、彼の遺品は」
「ああ。そう、ですね」
彼の遺品はほとんど残っていない。証拠品は遺失して、家族や勤めていた職場は痕跡を抹消に必死だった。身内から連続殺人犯が出た事を、なかった事にしたかったのだろう。
気持ちは判らないでもない。彼等にとってリチャードは血縁者や同僚という存在でしかないのだ。殺人鬼であった彼の遺体を引き取り、墓を作り、未だ彼を英雄と呼び慕っている私とは根本的に違う。言うなれば彼等は、ごく普通の感性を持った、善良な人間だ。
あれから既に何年もの歳月が経過している。彼の指紋やDNAの付着した遺品は既に大半が紛失し、何処かへ売り払われるか、処分されているかの道を辿っていたに違いない。注意深く探せば1つや2つは見つかるかもしれないが、彼に関わっていた人間の多くは快くその捜索を引き受けたりはしないだろう。
「彼のご両親が、君が何か持って行ったはずだと」
「ええ、の家を片付けたのも、私です。その中で幾つかを、形見として」
何組もの里親や施設を転々として、おまけに改名までしていたのだから私の捜索も楽ではなかっただろうに。余程リチャードの痕跡が欲しいのだろうか。否、自問するまでもない、欲しいのだ。それも、喉から手が出る程に。
あの惨殺現場から生還したエメリーン・バンスの夫君が証言した犯人像は兎も角、現場からは死んだ人間の指紋が出たのだ。流石に今の時点で死者が墓から這い出て復讐を決行したなどと狂った結論を出す人間はいないようだが、代わりに、データ化する際の人為的ミス、そして口を利けぬ死者への誤認逮捕や冤罪という単語が脳裏を掠めたのだろう。事件の大きさが大きさだけに、場合によっては下に勤める何人かの首が飛ぶだけでは済まず警察全体の信用問題に関わってくるのだから、何としても手に入れたいに違いない。
「けれどあれで、そちらのお役に立てる物かどうか」
「いや、必ず役に立つ。何でもいいんだ、どんな小さな物でも」
「……判りました」
私はリチャードの家の隅々、それこそ寝室からバスルームまで掃除と片付けこそしたが、その整理された遺品の大部分は彼と縁のある人間達に託した。私が持ち出したのは一抱えもない箱に収まる程度の物だというのに、大部分の遺品を受け取りながら小さな欠片すら家族や同僚達は捨てたのか。
今更どうしようもない事を考えながら立ち上がり、ギモーヴさんの隣に飾られ、オレンジ色をしたセーターの上からでも判る位に継ぎ接ぎだらけのスノーウィ君を抱える。いつも隣で座って居るはずのピーター君が何故か行方不明なのだが、エイゼルかユーリアンが持って行ったのだろうか。
まさかあの2人が和気藹々とお人形遊びに興じるとは思えない。持ち主である私に中々大切に扱われないピーター君だが、仕事を頼む場合を除けばそれなりに可愛がっているのだ。
持って行ったのが彼等ならば騎士団を相手した時のように惨殺されている可能性はごく僅かなのでそう慌てる必要もないが、暇を持て余して新たに開発した呪文の実験台になっている程度の事は普通にあり得そうである。それが悪い訳ではないが、あるはずの物がないと敵襲かと不安になるので一声掛けて欲しいとだけ告げておこう。
すぐにでも忘れてしまいそうな、さして重要ではない予定を脳内に書き込んでからスノーウィ君をリビングテーブルの上に置き、ソファに浅く座る。ほとんど原型を保っていない彼を見て、誰よりも先に口を開いたのは老刑事ではなく中年刑事の方だった。
「この左足の刺繍、86年製という事は、もしかしてハロッズの初代イヤーベアかな」
「よくご存知ですね。いえ、よく判りましたね。これがイヤーベアだと」
「去年、じゃなくて一昨年か。娘に頼……いや、サンタクロースから娘にプレゼントが届いたんだ。ポーラーベアのぬいぐるみが」
「言い直さなくても結構ですよ。老人の正体は、私も存じ上げておりますから」
彼の言葉から滲む幸せな家庭を垣間見て微笑み、様々な色の布と糸で縫い合わせて補修された白熊のスノーウィ君の頭を撫でる。
「89年だと、パーシー君ですね。スノーウィ君と北極で知り合って、ハロッズに来た」
「君も詳しいね」
「彼はスノーウィ君と同じポーラーベアですから、それで記憶に残っているんです」
腕の動きを止めて、リビングテーブルに座らせたままの状態でスノーウィ君の背中を押した。老刑事の目の前にまで押し出されたスノーウィ君は、それが当たり前のように今の状況を無言で受け入れている。
そんな白熊だと言い難いスノーウィ君を眺めていた老刑事が、ようやく口を開いた。
「とても、大切にしているんだね。このぬいぐるみを」
「リックから受け取った、最初で最後のプレゼントですから」
大抵の人間は、このような状態のスノーウィ君やピーター君を見ると私は物を大切に扱わない人間だと勝手に決め付けるが、老刑事は流石に長年犯罪捜査に関わっているだけあってそうではない事にすぐ気が付いたらしい。
継ぎ接ぎだらけのぬいぐるみ、これだけならば確かに物を大切にしない子供という不名誉なレッテルを張られる事もあるだろう。しかし、メルヴィッドに引き取られるまで、私には物を大切にしろと躾を行ったり、壊れた物を直してくれるような優しい身内が存在していない。それは私の居場所を捜索した彼等もよく判っているはずであった。
ならばスノーウィ君をこうなるまで破壊したのは周囲の人間で、私がそれを淡々と直して来たと考える方が自然である。布や糸に大きな違いはあるものの繕い方も常に一定で、少し観察すればスノーウィ君が同一人物の手によって修復された事は明らかであった。事実、彼はこう考えたからこそ、そのような台詞を言ったのだろう。
中年刑事の方が複雑な表情を押し殺しながら私を見据えた。伯母に殺されかけた子供の命を救った連続殺人鬼、彼に買われた事によって数奇な運命を辿った人形をどう評価するべきなのか決め倦ねているのだろうか。
ややしてから、彼は閉じ合わせていた唇を開いた。
「では、いいかな。このぬいぐるみを借りて行っても」
「いずれ、返していただけるのですか?」
するりと吐き出してしまった疑問は、別に揚げ足取りでいった訳ではない。
凶器等の余程重要な証拠品でもない限り、基本的に任意提出の証拠品は色々と調査された後、一定期間を経過すると手元へ戻って来るのだ。ただ今回は、言った後で公的機関に対する皮肉に聞こえると気付いてしまっただけで。
少し言葉に詰まった後、出来るだけ努力すると言おうとした中年刑事の言葉を老刑事が塞ぐ。子供相手だからといって安請け合いはするべきではないと忠告し、恐らくこのままの状態では無理だと返答された。リチャードの痕跡を調べる為に、無遠慮に解体されるという事だろう。こちらは、予想していた。
「正直な方ですね」
「子供が相手でも、その場凌ぎの出来ない約束はしない主義でね」
「素晴らしい主義だと思います。それでは矢張り、スノーウィ君は戻って来るとしても、見られない状態でなんですね」
「無責任と感じるかもしれないが、どうなるか判らないというのが一番適当な表現なんだ。私も彼も、鑑識課にいた経験がなくてね」
「然様ですか」
子供ではなく、一個人として私を見つめる鋭い視線に笑みが溢れる。
彼になら託せるだろうと首の後ろに両手を回し、金属製の留め具に爪を引っ掛けた。手入れの時以外は眠る時も入浴する時も決して肌身離さなかった、とても大切な彼の遺品。
「それは、ペンダント?」
「メモリアルジュエリーです。彼の、リックの遺髪が入った」
スノーウィ君と一緒に持って行って欲しいとテーブルの上に置くと、2人は目を丸くしてそれはとても助かると私に告げた。遺髪を有難がるという事は、現場からは彼のDNAも発見されたのか。
尤も、遺髪と告げたように、この髪は彼の遺体から切り取った物なので毛根部が存在しておらず、上手くやってもDNAの抽出成功確率は1割以下だろう。それでも、今の彼等にとっては希望の欠片なのだ。
「ありがとう。これで、捜査が進展するはずだ」
「お役に立てて何よりです。私の手元にあるリックの遺品は、これだけなので」
そう言いながら少し悲しげに微笑めば2人の刑事は罪悪感を秘めた表情で必ず捜査に役立てるからと固く誓ってくれる。しかしすぐに、老刑事の瞳が揺らいだ。推理小説に登場する探偵の如く、私の言葉に違和感を覚えてくれたらしい。
どうかしたのかと中年刑事が尋ねるが、それを無視して彼は私を見据える。一瞬前の揺らぎは既に消え失せていた。脳内で私の言葉を単語に分解し、反芻し終わったのだろう。
「今、手元にある、と言ったね」
「ええ、それが何か?」
「それは、手元にない遺品ならばある、という意味なのかい」
「勿論です。彼の鞄や、ちょっとした趣味の物は遺愛品として棺の中に収めましたから。けれど、警察の方ならばそちらはとっくに」
「待ってくれ。彼の墓が、存在するのか?」
「はい。もしかして、ご存知ありませんでしたか」
遺品がないと言って私の元を訪れたので知らないだろうと思い話を進めていたが、矢張り知らなかったらしい。
死後に露見した凶悪犯罪の所為で、家族からも同僚からも見捨てられた彼には葬儀らしい葬儀もやってやれなかった。墓穴を掘り棺を運ぶ為に金銭で雇った何処の誰かも判らない人間を除けば、彼の墓所を知っているのは私とメルヴィッドとレギュラス・ブラック、そして書類一式を受け取った役所の誰かだけである。公式には、であるが。
埋葬地は彼と何ら関わり合いのない辺鄙な土地であるので、その辺りが盲点になったのだろうか。そもそも、殺人鬼の墓を作る奇特な人間が居るはずがないと思い込み、捜査すらしていなかった可能性の方が高い気がするが、どの道、知らなかった事には変わりない。
しかし、彼等は辿り着いた。私が考えていたよりも短期間で。
端役が決定し、舞台上演に必要な装置は全て整えられたのだ。彼等が台本を知らぬただの人間である以上、私が仕掛けた小賢しい罠は、間違いなく誰かに発動する。
「初耳だ。いや、遺体を引き取ったのが君なのは判っていたが」
「周囲の大人が勧めるがまま火葬したとお考えになりましたか? それとも、当時7歳の子供に反論や手続きが出来るはずがないと? 子供でも老人でも、やろうと思えば出来る事は沢山あります」
「全く、そのようだ」
真っ白な髭を親指で撫でて、老刑事はソファに浅く座り直した。中年刑事の方も両肘を膝に置き、何だかいい年した男達で内緒話をするような格好になる。
「関係書類を見させて貰ってもいいかな、それと埋葬地付近の地図もあれば嬉しいのだが」
「構いませんよ、少々お待ち下さい」
言いながらリビングに備えてあるガラス張りの棚まで行くと、2人の刑事は再び驚いたような表情をした。先程ガレージで驚いた時もリビングという単語があったが、何がそんなに可怪しいのか私には皆目見当がつかない。
ヘマをしている訳ではないと思うが、自分の気付いていない所でやらかしているのだろうか。しかし、あの2人は私を訝しんでいるようには見えなかった、第一、もしも何かあったのなら、きっと何処かで様子を見ているはずのメルヴィッドが黙ってはいない。
多分大丈夫、きっと大丈夫と自分自身に言い聞かせ、抽斗の中から書類一式と、念の為、全国版の地図を取り出して小脇に抱えた。彼等も警察に所属する者なので住所さえ割れればそこからは簡単だろうが。
そう、調べあげるのは簡単だ。ただし、あそこは場所が場所である。
「どうぞ、こちらが書類になります」
きっと、騎士団を丸ごと騙したり、メルヴィッドを連れて行った時のように彼等を案内しなければならないだろう、予想していた事ではあるが内心深く嘆息する。彼の月命日の墓参りへは、1週間程前に行ったばかりだ。
「こんな場所にあったのか。いや、待てこれは……なんて事だ」
「ポッター、じゃなかった。君、この場所で確かなのか?」
「場所というのは、リックが眠っている場所がですか。嘘偽りありませんよ。自然墓地の形式を取っているので、ただの森との判別はし辛いとは思いますが、正式に墓地として登録されている土地です。地図だと丁度、この辺りでしょうか」
大きく重い全国版の地図を逆さに持ち、小さな指先である一点を指すと2人の表情が硬直する。視線の先は私の爪ではなく、その付近に存在する小さな村。
どうやら私が変装したリチャード・ロウの足取りはかなり正確に追われているらしい。当初から目論んでいた通り、真冬にコートも羽織らずスーツ一丁の薄着で居たので様々な人間がよく覚えていたのだろう。
そういえば、帰宅時に手渡したパラコート入り飲料のその後が未だ報道されていないのだが、もしかして農薬の混入に気付かれて通報されたのだろうか。だとしたらリチャードの定規では死ぬべきではないと定義される、賢い老婆達である。
「お待たせしました……何か、ありましたか?」
新事実が発覚し俄に騒がしくなったリビングへ現れたメルヴィッドは、ただならぬ雰囲気を悟った演技をして、3人分のティーカップやマグを乗せたトレイをテーブルに置き、そんな怖い顔をして一体どうしたのかと尋ねた。しかし、それに対する返答は中年刑事が書類を探す荒々しい仕草のみで、体格のいい男性の起こした風で昇る湯気が乱れる。
辺りに紅茶とホットミルクの甘い香りを散らしながら2人の刑事は断りの言葉を入れ、重要な証拠を一刻も早く本部へ持ち帰りたいのか急いで任意提出書への記入を求められた。それとなくスノーウィ君や遺髪入りペンダントの事に触れてみたが、どうやらそちらは不必要らしい。確かにほぼ完全な形で遺体や遺品が手に入るかもしれないというのに、態々人形やら毛髪やらを押収するのは逆に手間である。
この2点しか遺品を持っていない子供の格好をした私に気を遣った、というのもありえない話ではないが、そこまでは流石に判らない。
「記入事項は、これで宜しかったですか?」
「ああ、ありがとう。それで、大変言い難い事なんだが……」
「リックの墓所にまで、私も行かなければならないんでしょう?」
物分りのいい子供だと老刑事の目が語るが、大人の言葉の先読みをする様が気味が悪いとの印象に変わりつつある事も同時に悟った。
だからといって今頃子供のふりをしても無駄であるし、そもそも、私が引き取られた先々で大人びて気持ちが悪いと避けられた子供という事実も存在する。警察が調べればすぐに判明する事実と異なる行動を起こすのは得策ではない。
「墓所と言っても見た目は森ですから、目印になるような物はありません。口頭で説明するのも難しい場所なので、どうしても案内は必要でしょう」
それとも彼が言いかけたのは墓を掘り返す際の事務手続きや立会人の件だろうかと思ったが、イギリスの墓埋法は日本程面倒ではないのでその場その場で何とでもなるだろう。一応この件に関してはエメリーン・バンス殺害計画時において既にメルヴィッドの許可も得ているので、大きな問題はない。
ただ、私は常時大分抜けているし、彼も先日のように稀にうっかりと何かやらかす事があるので、それが重なっていないかだけが心配ではあるが。
「大丈夫、なのかな」
「月命日には必ず訪れていますから、迷ったりはしませんよ?」
「いや。そうではなくて、彼は」
老刑事の視線がホットミルクのマグだけをテーブルの上に残してトレイを回収したはいいが、その場から立ち去ろうとしないメルヴィッドに向けられた。やや後ろめたく緊張した視線に対して、彼の赤い瞳は柔和な眼差しを湛え、知っていますよと唇が言葉を作り出す。
「全て納得の上で、共に暮らしているんです。些細な事でこの子を否定したりしません」
2人の会話の意図を理解出来ず熱いマグの縁に口を付けながら軽く首を傾げると、いち早く気付いたメルヴィッドが苦笑して、この人達なりに私を心配しているのだと告げた。
「の命の恩人が連続殺人犯だと知ったら、施設に送り返すんじゃないかと思われているんだよ。君は私に、全部話してくれたのにね」
「ああ、そういう事ですか」
納得出来た所で生姜と蜂蜜の香りのするホットミルクを飲み込み、彼等が三度驚いたような顔をしている原因をやっと理解する。
要は、当たり外れが非常に激しい里親家庭で大きな当たりを引いた姿を見た故なのだ。警察関係者が聞きたい事があると訪ねて来てあっさりとリビングへ通したり、家の中の物を把握し勝手に出し入れしたり、過去を全て受け入れて暮らしていたりと、扱いが実子と全く変わりない事への純粋な驚き。
本来ならば、そんな事で驚かれる環境の方が実は異常なのだが。しかしメルヴィッド以外の里親はどれもアレであったので、気持ちは良く判ってしまう。
「それじゃあ、私はキッチンにいるから。何かあったら呼んで」
「ああ、いや。私達はそろそろ……君、案内して欲しい日が決まったらまた電話をかけるから、その時は宜しく頼むよ」
「いえ、こちらこそ」
結局書類関係だけを押収し、時間にしてほんの10分程いただけの訪問者を玄関まで送る事で、拍子抜けするくらい呆気なく一連の事態は終わってしまった。
万が一疑われた時の為にメルヴィッドを巻き込みポリジュース薬で色々とアリバイ工作をしたのだが、それも無駄であったらしい。まあ、こんな事もあるだろうと肩を竦めて足早に玄関から去り、被っていた猫を塵も残らない程に抹殺して最悪のドライブと予定外の訪問客と空腹で機嫌の悪いメルヴィッドの為にリビング経由でキッチンへと向かう。
「お疲れ様でした。お昼作りますから待っていて下さい」
「5分待ってやる」
「それでは碌な物が出来ませんよ、せめて10分下さい」
「5分だ」
ソファの肘掛けの両側に頭を足を乗せ殺気立っているメルヴィッドは全く融通する気がないらしく、頑なに言いつけた時間を守れと告げて来た。苛々している気持ちはこちらとしても判るつもりなのだが、それでは大した物が出来ないのでキッチンに勝手に設置した保存食の棚からマシュマロとシリアル、それにオレンジピールで作ったチョコレートバーを幾つか呼び出して、その内の1本を無防備に開いていた口の中に突っ込む。
恨めしげに見上げる赤い瞳を鏡にしてペンダントを首に掛け、10分待って欲しいと言い放ちリビングを去るが、背後から文句が出ないので許可が下りたと見ていい。
さて、時間が倍に伸びたとはいえ、制限時間は10分である。常備菜はいつものように冷蔵庫に眠っているが、あまり悠長には構えていられない。
それにしても、料理を作って精神安定を図る人間と、食事を摂ってストレス解消する人間同士の組み合わせは非常に理想的ではないだろうか。鶏そぼろと金平人参の入った保存容器を取り出しながら、世の中というのは本当によく出来ていると思う次第であった。