家族ごっこ
リドルが家にやってきて、居候生活を始めて一週間になろうとしたその日の朝早く、彼は再び訳も分からないままマグルの車に押し込められると街まで連れて来られ、太陽が高く昇った頃、どこかの大型ショッピングセンターへと放り出された。
「では、私は別の用事があるのでこれで。用が済み次第見付けてあげますから適当に食事をして遊んでいなさい、お金は鞄の中に入れておきましたから」
「え?」
いきなりの事ではあるものの、数日前にも同じような事があったので何を言っても無駄だと悟っているリドルはそれ以上何かを言おうとせず、昔から何一つ変わらないフリーダムっぷりを発揮した女性の背中を静かに見送っていった。
隣には大人しくリドルを見上げ首を傾げている珍しく洋服を着込んだ小動物、もといがいる。温泉での一軒以来随分懐かれたのだが、懐かれ過ぎてあまりにも無防備に笑うようになり、こういった大勢の人間が居る場所に野放すのはあまりにも危険過ぎた。
放浪癖はないようなので勝手にどこかに行くという事は絶対にありはしないが、欲目なく可愛らしいと思うので目を離したらその隙に攫われのではないだろうかと心配になる。
「リドーさん?」
思考に没頭している事が気になったのか、が不安そうな顔でリドルの名前を呼び、大丈夫なのかと訊ねてきた。熱でもあるのかと心配してきたので大丈夫だと笑って見せると、少しだけ安心したようだった。
このまま立っていても心配されるだけだろうからと、取り合えず建物の内部が詳細に書いてある地図を探す為に歩き出すと、リーチの短い足を懸命に動かしてちょこちょこと着いてくる。カルガモの雛のようだ。
しかし、このまま後ろを歩かれては誰かに攫われるかもしれない、という考えがリドルの脳裏に浮かぶ。
迷子になるかもしれない、という理由ではない辺り、リドル自身も非常に危険な方向に行っているのだが、彼に対して唯一発言権がある女性はこの場に居ない。仮に居たとしても面白がるだけだろうが。
「、手を繋ごうか」
「て」
「ああ」
お前が攫われるかもしれないだろう、という発言はせず、リドルはに手を差し伸べる。差し出された方は、おずおずと手を差し出して、長い指を遠慮がちに握った。
「ちゃんと繋がないと、はぐれたら大変だからな」
触れているのかすらわからないくらいの手を解き、小さな手をやんわりと握り返すとが顔を赤くして俯いてしまう。
「リドーさん」
「どうした?」
「て、はなす、ない……、リドーさん、いっしょがいい」
周囲の人間を怯えるように手を強く繋いだは、リドルの側に寄り添いながら言った。
「大丈夫だ、何があっても離さないから」
「ほんと?」
「ああ、離しはしない」
空いた手での髪を撫でながら、リドルは微笑んだのだった。
「では、私は別の用事があるのでこれで。用が済み次第見付けてあげますから適当に食事をして遊んでいなさい、お金は鞄の中に入れておきましたから」
「え?」
いきなりの事ではあるものの、数日前にも同じような事があったので何を言っても無駄だと悟っているリドルはそれ以上何かを言おうとせず、昔から何一つ変わらないフリーダムっぷりを発揮した女性の背中を静かに見送っていった。
隣には大人しくリドルを見上げ首を傾げている珍しく洋服を着込んだ小動物、もといがいる。温泉での一軒以来随分懐かれたのだが、懐かれ過ぎてあまりにも無防備に笑うようになり、こういった大勢の人間が居る場所に野放すのはあまりにも危険過ぎた。
放浪癖はないようなので勝手にどこかに行くという事は絶対にありはしないが、欲目なく可愛らしいと思うので目を離したらその隙に攫われのではないだろうかと心配になる。
「リドーさん?」
思考に没頭している事が気になったのか、が不安そうな顔でリドルの名前を呼び、大丈夫なのかと訊ねてきた。熱でもあるのかと心配してきたので大丈夫だと笑って見せると、少しだけ安心したようだった。
このまま立っていても心配されるだけだろうからと、取り合えず建物の内部が詳細に書いてある地図を探す為に歩き出すと、リーチの短い足を懸命に動かしてちょこちょこと着いてくる。カルガモの雛のようだ。
しかし、このまま後ろを歩かれては誰かに攫われるかもしれない、という考えがリドルの脳裏に浮かぶ。
迷子になるかもしれない、という理由ではない辺り、リドル自身も非常に危険な方向に行っているのだが、彼に対して唯一発言権がある女性はこの場に居ない。仮に居たとしても面白がるだけだろうが。
「、手を繋ごうか」
「て」
「ああ」
お前が攫われるかもしれないだろう、という発言はせず、リドルはに手を差し伸べる。差し出された方は、おずおずと手を差し出して、長い指を遠慮がちに握った。
「ちゃんと繋がないと、はぐれたら大変だからな」
触れているのかすらわからないくらいの手を解き、小さな手をやんわりと握り返すとが顔を赤くして俯いてしまう。
「リドーさん」
「どうした?」
「て、はなす、ない……、リドーさん、いっしょがいい」
周囲の人間を怯えるように手を強く繋いだは、リドルの側に寄り添いながら言った。
「大丈夫だ、何があっても離さないから」
「ほんと?」
「ああ、離しはしない」
空いた手での髪を撫でながら、リドルは微笑んだのだった。