■ ブログで書いていたネタ
■ 25話『金華ハムと姫甘藍のスープ』(四月馬鹿の話)のIF
■ 変な挑発するからメルヴィッドが新世界の扉を開いた話
■ エロい方向でのR15
■ 一人称の所為でメルヴィッドがとてもきもちわるい
■ 四月馬鹿に悪乗りしたお爺ちゃんに押し倒された所から
レイビーズの蛇
汚れた父の事を知った時も、どうしようもなく愚かな母を知った時も、秘密の部屋へ辿り着いた時も、マグルや魔法使いを殺した時も、怒りや苛立ち、意識の高揚はあったが、頭の芯から急速に冷えていくような、こんな感覚を味わった事はなかった。
碌な抵抗も出来ないまま転がされ、筋肉の付いていない細い体が腰の上に跨り、成人と少年の体重差を易々と超える圧倒的な技術によってベッドに組み敷かれる。蔑むように細められた緑の瞳の奥に、この小さな体の内に存在する黒い瞳の男の表情が見えた。
男は、は笑っている。それも酷く優しい笑顔で。
血液が頭に戻らない。心臓は何時にないくらいに速く脈打っているというのに、その血液は一体何処へ行ったのだろうか。ベッドのシーツは乾いたままで場違いな春の匂いがした、私の血は体外へ流出している訳ではないらしい。
ひたり、と冷えた首筋に手の平が触れて意識が頭上の影へと向かう。逆光で表情は見えないはずなのだが確かに微笑みを浮かべている事が判り、唯でさえ煩い心臓が更に跳ねる。僅かな光を受けた唇から小さな白い歯を覗かせ、赤い舌が囀るように私に向けて何か言っていたが、ふと、それが止んだ。
「……大変申し訳ありません。エイプリルフールだからといって御巫山戯が過ぎました」
明瞭に聞こえた困惑を含んだ声、それを合図にしての上半身が離れ腰が浮く。
だから、手を伸ばした。
伸ばして、子供服の胸倉を掴み全体重を掛けて引き寄せる。弾みで小さなボタンが幾つか千切れ飛んで床に転がる音がしたが知った事ではない。
「許すものか」
「メルヴィッド」
「私はお前を、を許さない」
互いの呼吸が唇に触れ合う程顔が近い。
に無理やり押し倒させている事実に鼓動が未だ鳴り止まなかった。次第に体温は上がって来たが、背筋だけは薄ら寒い。臍の下辺りからぐるりと、世界と内臓が裏側に反転するような気分になった。
言い訳の出来る状況ではないとでも思ったのか、は息を詰めて傷付いたような表情をして、それからゆっくりと息を吐き出して諦念の表情に切り替えた。諦めたというよりは道理に背いた事を受け入れたように見えるが、そんな物はそれこそ今更だろう。この男の持つ道理は異質に過ぎ、端から人間と言う生き物からは逸れている。
だから、もっと踏み外して行っても構わないではないだろう。
は私の協力者で、私を甦らせ、私に未来の知識と名を与え、私の思考を変えた張本人だ。
最早私は魔女とマグルの間に生まれた、ただの一魔法使いであるトム・マールヴォロ・リドルでもなければ、闇の帝王であるヴォルデモートでもない。私はメルヴィッド・ルード・ラトロム=ガードナーという名の人間として成ってしまったのだ。
その変化の責任をは未だ取っていない、ならば、取らせるまでだ。
「責任を取れ」
「手か口か、尻の穴を貸せという事でしょうか」
「いや」
大口を開けて舌を伸ばし、暑さにやられた犬のように息をしながらの顎の裏側を舐める、寝汗で少し塩辛い。血液から鉄臭さを抜けばこんな味になるだろうか。皮膚の表面から感じ取った器の肉は柔らかかったが、しかし、所詮これは偽物の体だった。本来の味は、一体どうなのだろう。
じわりと脳の芯が冷えて行く、この感覚が堪らなく良かった。
私に舐められるのが相当不愉快だったらしい、隠し切れなかった嫌悪感と殺気の滲んだ視線に貫かれ腹の裏側に熱が篭る。隠しなどせずに蔑めばいい、この男にならそうして貰いたいとすら感じた。
ようやく思い至る。どうやら私は、狂ってしまったらしい。自分でも知らずにいた性癖が引き摺り出されたと表現した方が適当かもしれないが。
これも一つの色狂いなのだろう。理性を総動員すれば静止出来ない事もないが、した所で何になるのだろうか。出来るのは静止までで、この性癖を知り、それに嫌悪を抱くどころか歓び受け入れてしまった時点で戻れない事は確定していた。
右腕を細い腰に回し、尻の谷間に股間を押し付ける。勿論初心な反応はなく、はより一層蔑みの目で私を見下ろした。
この視線が、この殺気が向けられる度に血の気が引き、それが歪んだ性欲へと直結する。
挑発してこの細腕に引き摺り倒されたい、暴言を吐きこの手の平で殴られたい、矜持を傷付けて踏み躙られたい。この男を詰りながら、嬲り犯されたい。
「・、命令だ。狂った私を飼い馴らせ」
ああ、私は快楽に屈し、欲情している。