階段
ダーズリー一家の家がそのまま入りそうな庭園を横目に、スペースが余り過ぎている白いアスファルトの駐車場に車が停まる。奥にクラシックカーと大型のバイクが一台ずつ並んでいて目を丸くしていると、助手席のリーマスがこの上ワゴン買うつもりとか金銭感覚おかしいよね、と呟いた。
その言葉に全面同意しながら車を降りようとすると、既に運転席から先に降りてドアを開けて待っていた。それとほぼ同時にシリウスがトランクから荷物を取り出し、一瞬にしてやるべき事が無くなってしまったハリーが恐縮して車から降りる。
「君達二人には良家の血筋を感じるよ、逆の意味で」
して貰う立場なのに世話好きなんだよね、と言ってハリーの両肩を叩くリーマスだけが何故か精神的味方に見えてしまい、思わず駆け寄るとシリウスが傷付いた顔をした。
シリウスと一括りにされて少々不満そうだが正論なので沈黙したは、その顔のまま玄関へと居候達を案内する。
「私もね、初めてこの家見た時は驚いたよ」
「離れもないし、貴族共のマナーハウスに比べれば随分小さい方だと思うが」
「そうだな。中庭があるわけでもないし」
「ハリー、お金持ちって恐いねえ」
「……はい」
私たちは仲間だよね、と確認してくるリーマスに思わず相槌を打ってしまい、シリウスは更に落ち込む。は比べる対象が大き過ぎただけだと反論したが、二人の家の概念ってどれだけでかいんですか、と素直に突っ込んだ。
すると三人は顔を見合わせ、内とリーマスがシリウスの家は城だと断言する。そして次にリーマスとシリウスが、の家は遭難すると口を揃えた。
「城じゃない! 城っていうのはホグワーツ城みたいな建造物を言うんだ!」
「お前等のその言われ方だとまるで屋敷で遭難するような口振りだな。遭難自体は否定しないが敷地内と訂正しろ」
「いや、それでも二人とも普通じゃないよ」
もう一度庶民として突っ込んだハリーに、リーマスが腹を抱えて笑い出す。
この二人が同じ扱いをされるなんて稀有だと苦しそうに言って、ハリーの頭をぽんぽん撫でた。そんな二人に怒る気が全く起きないは全てを諦めた表情で玄関の鍵を開ける。もう好きなように言えと背中が語っていた。
「おじゃまします……」
「やり直し」
「そうだね」
「ハリー、もう一度」
今度は大人三人が少年へ駄目出しの集中攻撃を仕掛ける。
何がいけなかったのだろうと首を傾げるハリーに、家主が心外そうな顔をしシリウスが代表として「ただいま、だ」と告げた。ホグワーツに行くまではここが家だからねとリーマスが笑い、がただいまと言って中に入る。
「おかえり」
「おかえりなさい」
「おかえり、ハリー」
先に入ったが差し出した手を握り、シリウスとリーマスが背中を押した。
三人の手はどれも暖かく、ハリーは理由もなく泣きそうになった。