MD
マーケティング活動の一つで、消費者の欲求を満たすような商品を適切な数量・価格で市場に提供する企業活動。商品化計画。
略称 ... MD
「ということで、。写真のモデルになってくれないかい?」
「断る」
カメラ持参でニッコリと笑って自分の視界に現れた鹿に、はコンマ秒の時間も与えずに返した。
「需要高いんだよ。ね、。ぼくの資金源になると思って」
「それが嫌だと……『ぼく』?」
聞き違いではない。
いま、確かにジェームズは単数形で言った。
「シリウスとリーマスがを撮って売りさばくなんて賛成するはずないじゃないか」
「笑顔でほざくな」
「いやいや事実」
にこにこと笑い続けるジェームズには眉間に青筋を浮かべて、ジェームズの手の中にあるカメラのシャッターがいつ切られるのかと不安がっていた。
「マグルの動かない写真だからさ、いいでしょ?」
「嫌だ」
「のケチ」
「お前の金ヅルになんぞなりたくない。そして何より写真を取られるのは大嫌いだ」
「君が大嫌いって言う事は相当なんだろうね」
……と、この時はジェームズ・ポッターは・の写真を諦めた。
しかし、勿論こんなことで凹むジェームズ・ポッター様ではない。
その日の昼頃
「」
「なんだ、まだ持っているのか」
「一枚でもいいから取らせてよ」
「絶対御免蒙る」
いっそあのカメラを壊してやろうかとは思ったが、結構古くていいカメラだというのが一目で判り、八百万の神に祟られそうなので止めておいた。
「あら、ジェームズ。を被写体にして何の勉強かしら?」
「そんなのモチロン、愛すべきリリー、君の姿をフィルムの中に納めるためにやっているに決まっているじゃないかっ!」
嘘も方便というか、寧ろ半分くらい本気っぽい。
10割100%本気でいいから、とは心の中で浅くツッコんだりもした。
「じゃあおれは必要ないな」
溜息を交えながら去っていくにジェームズは何か言いたそうな瞳で彼の背中を見ていたが、愛しのリリーと金のどちらを取るかと言われればリリーに決まっている。
「出来上がったらおれにも見せてくれ」
「もちろんよっ、」
「(! 次は絶対撮らせてもらうからな……!)」
でもって授業後
「! 今度こそ写真を撮らせてもらうよ!」
「おまえも諦めが悪いな」
「あたりまえさっ! この間目安箱を設置したら『スネイプの爆笑できるスナップ』を抜いて『の生写真』がダントツトップだったんだからね!」
「暇人共が。目安箱なんて設置していたのか」
「集計してる途中でリーマスとシリウスが切れてね……あの時は大変だったなあ」
しみじみと語るジェームズを無視しては寮に向かって廊下を歩む事にした。
こういう輩とは関わらないのが一番いいのだ……何だか回想しているジェームズの横をいとも簡単に通り過ぎて、は気は進まないが自分の部屋に向かった。
「ちょっと! 待って!」
「……」
言われた通りに足を止める自分が恨めしい。
カメラを構えるジェームズが恨めしい。
「じゃぁ撮るね……っがッ!?」
居るかも知れない付喪神に心の中で手を合わせてから、カメラを構えたジェームズをはカメラごとハイキックで蹴り飛ばした。
妙な赤い痣を作って廊下に痛さのあまり転がっているジェームズ(眼鏡が割れていた)を完全無視して、は談話室へと帰っていったのだった。
んでもって夜の談話室
「……」
「いい加減にしないか」
読んでいる本から目を離さずにはジェームズの方に向かって手をヒラヒラさせて追い払おうとした。
「ねえ、なんだか段々扱いが酷くなってきてない?」
「気のせいだろう」
軽く欠伸を漏らしては本を閉じた。首を左右にやると関節が鳴った。
「さて、寝るか」
「じゃあその前に一枚だけ」
「いやだ」
カメラを構えるジェームズには興味なさそうにそれを一度手に取って、レンズに持ち主の姿を映しだした。
「ぼくが撮りたいのは君なんだけど?」
「そうか……だ、そうだぞ。エバンズ、ルーピン、ブラック」
「え? え……!?」
恐る恐る振り返ると……そこには般若も裸足で逃げ出すほどの恐ろしいオーラの、あくまで微笑んでいるホグワーツの女帝と腹黒狼と黒犬がいたりしたりした……。
「ひどいわジェームズ、わたしなんかよりもの方がいいって言ってくれれば、ねえ?」
「ジェームズ、ぼく集計中にキレた記憶があるんだけど。あれは何で怒っていたのかわからなかったのかな? は写真取られるのが大嫌いなんだよ?」
「ジェームズ! の写真を撮ってどうするつもりだ!? は生のだから可愛らしいんだぞ! いや写真のも十分可愛いと思うけど!」
「……えっと」
「さてと、寝るか」
「ちょっ、待っ、ぎゃあああ!」
でもってんでもって真夜中
「よし……は寝ているな……」
いい加減諦めればいいのに、全身青痣引っ掻き傷だらけでジェームズは月明かりを逆光にカメラを構えた。
「フラッシュ焚かなくても撮れるように改造しておいて良かった」
カシャッ! と音がしてもは寝返りを打つだけで起きる気配は無かった。あの恐ろしかった狼も起きる気配はない。
ジェームズは安心して写真を撮りつづけ、寝顔だけだけれど、取り合えずこれでいいだろうとようやくきりをつけたのはそれから1時間も後の事だった。
で、翌日
「……?!」
「どうした、ポッター」
「フィルムが! フィルムがない!」
「ああ、フィルムか。談話室で会った時抜いておいたぞ」
「何故だー!? じゃあぼくは何のために夜中にこっそり人目を忍んでの写真を撮ったんだ?!」
「これを期に諦めるんだな」
「いや! これしきの事で……!」
「エバンズー、ルーピンー」
「! 悪かった! ぼくが悪かったっ!」
ジェームズ・ポッター。・の写真のMD失敗。
これに懲りて、彼はの写真を撮る事を止めたそうだ。