葡萄の葉
は温室の葡萄の木の上で一人困っていた。
普通のならば問題なく飛び下りるだろうが、今は三歳児くらいの姿。低木からでも落ちれば怪我くらいするだろう。
杖はあるが浮遊術は使えない。というか、使いたくない。
「だれかがとおりすぎるのをまつか」
慌てた所で、こんな温室の中では奇妙な肉食植物くらいしか声に気付かないだろう。正直なところ言うと、気付いて欲しくはないが。
……食われるし。死ぬし。
「あ、やっぱりだ」
そんな時そこへやってきたのは、何でこんな時だけお前なんだろうなと思わざるを得ない男、リーマス・J・ルーピンだった。
「窓から浮いてるのが見えたからもしかしてと思って来たんだよね」
「だれのせいでこうなってるとおもっているんだ」
「わー、の舌っ足らず可愛いね」
「ひとのはなしをきけ。そしてしね」
「所でその服はリリーが着せたのかな?」
「しね。きさまはなにしにここにきたんだ」
「さすがジェームズの彼女だけあるね、あ、ジェームズがリリーの彼氏か」
ここまで全く噛み合わない話をした後で、ようやくが、キレた。
「……かえれっ」
天使の笑顔を浮かべて、なんだか光り輝きながらはそう言った。
「でもぼくが帰ったら淋しくて死んじゃうだろうし」
「かのうせいがたかいのはがしかかろうしだ。こどくしはない」
「あーもー、可愛い!」
振り出しへ戻る。
「るーぴん。きさまほんとうになにしにきた……」
葡萄の木の上で肩を落としたはもうことごとくリーマスの言葉を無視した。
すると、ようやく無視される事が詰まらなくなったのか、リーマスも浮遊術でを木の上から下ろし抱っこした。
もちろんは嫌がった。
「はなせ!」
「えー、だってこんなを抱く機会なんてこれっきりだと思うし。一つ記念に」
「なんのきねんだ。あほう!」
「こんな可愛らしいに叱られても嬉しいだけだよ?」
「ぽったーといいるーぴんといい。なんでおれのまわりにはへんたいしかいないんだ!」
「あははは、それはの可愛らしさが犯罪的だからだよ」
「わけわからんわ!」
リーマスの腕の中で暴れるを無理やり抱き込んで頬擦りをする。鳥肌が立った。
「……るーぴん。あとでおぼえていろ」
「酷いなあ、愛情表現なのに」
「なにがあいじょうひょうげんだ! あぐあめんてい!」
適当に唱えて杖先に集まった光は、その場にとどまる事なくリーマスを温室の奥まで吹っ飛ばした。なぜ水が噴き出す程度の呪文で強力な追い払い呪文が使えたのかは定かではないが、身の安全を確保した後に結果は良好なので不問とした。
土埃をぱしぱしと払いながら、なんか肉食植物たちがリーマスの飛んでいった方にズルズルと歩いて行ったが、何も見なかった事にして温室の出口まで歩いて行ったのだった。