■ 60話に入れようとして入らなかった『いわく』
■ 武器物語(お爺ちゃんの杖ver.)
■ リグナムバイタ+ドラゴンの骨 66cm
■ 中二病を全面に押し出した話
■ とてつもないDOD臭
葬頭杖
けれども、一家の長子に生まれた男の子だけは手先が不器用で、魔法を使う力も弱く、両親や弟妹から蔑みの目で見られていました。
やがて男の子は大人の男性になり、素晴らしい杖が作れないのならせめてと、家族の作った杖を売る商売を始めました。
家族の作った杖はすこぶる評判が良く、また彼もひたむきな性格であったので、商売は順風満帆でしたが、それでも家族は杖を作れず魔法も碌に使う事の出来ない長男を事ある毎に嘲りました。
あくる日、いつものように家族からの罵声を浴び終えた彼は言いました。
「私の作った杖が1番強い事を証明する為に、これから少しの間、杖作りの旅に出ます。私が帰るまでに、家族各々で杖を1本ずつ作って下さい、それで勝負をしましょう」
とうとう頭がおかしくなったのかと家族は思いましたが、どうせ彼に勝ち目はないのだからと勝負を了承し、家族皆が1本ずつ自分の杖を作って帰りを待ちました。
何年かして、彼から家族宛てに愈々里帰りをする旨が書かれた手紙が届きました。家族はそれぞれ自分の作った、お世辞にも素敵とは言い難い杖を埃の被った棚から取り出して彼の帰宅を待ちました。
その晩の事、眠っていた母親の枕元に1つの影が忍び寄りました。眠りの浅かった母親は泥棒かと飛び起きて、急いで部屋の明かりを灯しました。
しかし、そこに居たのは泥棒ではなく、家を出た時よりも逞しく成長した一家の長男でした。手には、杖を持っています。
「なんだ。お前だったの、こんな夜更けに帰って来て、迷惑極まりない。お前は昔から、何をやらせても駄目な男だった、何で私からお前みたいな出来損ないが生まれたのか」
「お母さん、約束していた勝負をしましょう」
彼はそう言うや否や、杖と呼ぶにはあまりにも長く、重く、禍々しいそれを振り上げ、母親の脳天目掛けて振り下ろしました。
何度も何度も、振り下ろし続けました。
「これで全員。ほら、私の杖が1番強い」
彼はそれだけ囁くと、頭の形がなくなるまで潰された家族の死体をそのままに、遠い遠い異国の土地へと消えて行きましたとさ。