曖昧トルマリン

graytourmaline

[ D.Gray-man | xxx | 流血注意 ]

 せめて誰か、手を繋いでくれたらいいのにと、思ってみる。
 体中に色んなものを貼り付けられ、定期的に高く短い音を出す機械がぼくの生を証明してくれているけど、偶には人間に脈を取って貰いたい訳であって。
 まあね、判ってるよ。皆ぼくの事怖がってるし、中には怖いと思ってない人も居るみたいだけど、そう言う人も大抵気持ち悪がってるし。何せぼくは生き返るからね、死んでも、何度でも何十度でも。
 他のエクソシストも時々差別対象になったりするけど、ぼくのそれは能力の所為なのか何かちょっと違う。もっとこう、蝿とか蛆とか汚物とか見る目を向けられる。再利用可だから実験動物以下の存在なんだろうね、ハツカネズミやモルモットだってもっと温かみのある視線を送られているよ。リサイクルも良し悪しだ。
 心臓の鼓動に連動して鳴る電子音に、カウントダウンの声が被る。昔はこの時を刻む声を聞いただけで心臓の動きが乱れたものだけど、とうとう剛毛が生えちゃったのか最近は何の反応も示さなくなってしまった。悲しいね。
 10から始まった数字が0になった瞬間、視界が暗転。多分発砲音に似た軽い爆発音がしたと思うんだけど、口の中に押し込まれた爆弾が破裂した事が今回の死因なので実際はどうか判らない。ぼくの肉体修復速度は音速を超えられないので、壊れた瞬間から治ってるとかそう言うのはないんだ。
 仕方ないのでぼくの体を観察していた機械を見てみると、矢っ張り心臓は一瞬止まってたみたい。黒い画面を鏡にして映ったぼくの顔は変な風に血塗れで、顎から下は真っ赤なのに鼻から上はつるりと綺麗だった。
 その血も拭えないまま、今度は変な薬を注射されて、穴という穴から色々出しながら血の涙を流す。最初のうちは激痛で叫んでいたような気がするけど、何時しか咽喉が切れたみたいで声も出なくなっていた。あ、もしかしたら舌が壊死してたかもしれない。体の末端が腐るような感覚があったし。眼球が凄く痒かったから掻き毟ったんだけど、爪がぶよぶよに膨れていて引っ掻く事も出来なかった。多分抉れたんじゃないかな。
 何度目かの再生の後、ふと観察用の窓を見上げてみるけれど、誰もが視線を逸らすだけでぼくの可愛いコルム坊やのように目を合わせてはくれない。忙しいふりなんでしなくていいのに、ぼく別に怒らないし恨まないよ。
 酷い感情なんて絶対にぶつけないからさ、だから、本当に偶に、1年に1回で良いから、せめて誰かと手を繋ぎながら安らかに死んでしまいたい。
 そうすれば、ぼくが本当に生きているのかどうか、判る気がするのに。

冷たい指先