曖昧トルマリン

graytourmaline

[ 創竜伝 | 終 | アホ不憫 ]

 世にあけおめメールが飛び交う1月1日午前0時。その日、その時間帯にあけおめメールが届くかどうかを、おれたちは兄弟は賭けていた。
 別に景品も罰ゲームもないけど、ほら、正月って何か普段やらないことしたくなるだろ。
 因みに始兄貴は0通を予想。そんな事をする友人もいないし、茉理ちゃんもしない。
 続兄貴は恋人と初詣だ。おれも本当はそうしたかったんだけれど、騒ぎを起こすだろうからと始兄貴から却下され、学校の先輩でもある恋人からも寒いから嫌とか言われた。おれたち本当に付き合ってるんだよな?
 余の予想は2通、恋人と、大半のクラスメートからもメールを送ると言われたらしいので電波の混雑具合を適当に想像した結果らしい。
 まあ、おれも余も、正直言うと恋人からメールが来ればそれで万々歳なんだけど。
 そんな事を考えていると、時計の針が0を指す。兄貴と余に新年の挨拶をしようとする瞬間、携帯の着信音が鳴り響いた。
 奇跡的に0時丁度に届いたメールは、おれの恋人からだった。余が羨ましそうな目でおれを見て、あけましておめでとうと挨拶する。当然おれも上機嫌で返事をした、何だかんだ言って先輩は優しい。
 秒針が30を回った辺りで余にも1通着信がある。意外に兄貴にも着信があって、内容も見せてくれた。タイトルに『先生あけおめ!』とあった。生徒からは予想してなかったらしい。しろよ。高校生だぞ、アドレス知ってたら普通にするだろ。
 秒針が50を回った所で余にもう1通。そこで、0時0分に届いたメールは締め切られた。
「始兄貴だけ外れたな」
「でも終兄さんいいな。だってその着信音、先輩からでしょう? しかも0時丁度」
「はははは、羨ましかろう!」
「終、調子に乗ると叩き落されるぞ。あいつはそういう奴だ」
 先輩の授業を担当している兄貴が色々五月蠅いけれど、今のおれには関係ない!
 そうだ、浮かれて内容見てなかったからそろそろ見ないとな。それで返信しないと……って、なんだこれ!
「どうしたの終兄さん。あ、かわいい」
「可愛くない! なんだよこれ!」
「だから言っただろ、あいつに変な期待をするなって」
「先輩おれの事なんだと思ってるんだよ!?」
 タイトルが『おれン家の鏡餅こと干支天使』で開いてみれば、真っ白なうさぎの頭にミカンが乗せられた画像。あと、何か凄く自慢げな文。いや、確かに可愛いけど先輩の家のペット事情なんてどうでもいいんだけど?
 それより、あけおめの四文字すらないってどういう事だ!
「そいつからおれ宛のメールがこれだ」
 始兄貴がさっき0時に届いたメールを見せてくれた、っておい! 終にあけおめ言い忘れたから先生から言っておいて、とか酷すぎるだろ!
「だから言っただろ、あいつに期待をするなって。ああ、年賀状はきちんと送っているそうだ。そういう所はちゃんとしているな」
「何なの先輩! おれの事どう思ってるわけ!?」
「ぼく先輩に可愛かったですよって返信しておくよ。今度遊びに行った時に触らせてくれるかな。あ、ぼくにもやっと恋人からのメール届いたよ、終兄さん見る?」
「見ない!」
 なあ先輩! おれの事本当に好きなのか!?

そこの所はっきりしてくれ!