■ 夢主はホグワーツ入学前
■ イチャイチャしてる
■ 夢主は眼鏡属性ではありません、多分
■ この時代にネットはないよとかツッコミは無しで
■ 作中に出て来る輸入ドラマもまだ制作されていないよとか思っちゃ駄目
■ そもそも商品すら発売されてないとか考えないように
■ イチャイチャしてる
■ 夢主は眼鏡属性ではありません、多分
■ この時代にネットはないよとかツッコミは無しで
■ 作中に出て来る輸入ドラマもまだ制作されていないよとか思っちゃ駄目
■ そもそも商品すら発売されてないとか考えないように
シドの眼鏡
別に重大な病気ではなかったのだが、病名が病名な為に言うのが多少躊躇われる。これを見たら、強がっているようで実はかなり繊細な神経の持ち主であるリドルが凹む可能性が高かったのだ。
医者嫌いという訳ではないのだが、リドルが魔法至上主義で現代医学にそれ程執着しない性質でよかった、とこの時ばかりは安心する。お陰で診断結果を詳しく報告する必要も無く、矯正すればそれでいいと言えば興味なさそうに頷いていた。
きっと後日、自分で魔法薬を調合する気なのだろうが、そうは問屋が卸さない。というか、今回はが問屋の立場なので卸すつもりがない。
「どれにしようかな」
たかが一枚の紙切れ、されど大切な紙切れ。それを脇に置いたは使い慣れたノートパソコンの画面上に表示されている通販サイトを見つめて上機嫌に呟く。
「通販は試着が出来ないのが難点だよね」
サイト内に並ぶ画像は眼鏡。しかし、それは色々な意味で普通の眼鏡ではなかった。ある意味、がずっと憧れていた眼鏡だ。
その眼鏡は作りが少々特殊で、ツルの部分が首の後ろで繋がる代わりに、フロントの部分が磁石で開閉し掛け外しが出来る画期的な眼鏡だった。ずっと首から下げておけるので紛失する心配も軽減するし、何よりも掛ける人が掛ければかなり高レベルなお洒落眼鏡になる。尤も、リドルのような美形が眼鏡を掛ければどんな眼鏡でも大抵お洒落になるのだが。
「後の問題は、色かな」
リドルは赤系統の色を好んでおらず、出身寮の色である緑に思い入れがあるらしい。それと、金色よりも銀色の方が好きだとも聞いたが、これも出身寮が関係しているという。ついでに言うとパステルカラーも嫌いだという。には可愛いからと言って緑色のパステル系の物ばかり買い与えるくせに。
ちょっとばかり夢見がちな育て親で恋人でもある男の顔を思い浮かべながら嘆息して、サイト内に目を通しながら数種類あるカラーから似合わないものを独断で排除していく。
まずはリドルの嫌いな赤系統を排除、次に目の色と合わないという理由で緑系統を排除した。そして明るい色を排除し、残ったカラーを脳内で合わせてみる。
「……やっぱり、無難に黒にしよう。シドも黒だし」
リドルがその場に居たらそのシドという男を徹底的に追求するだろうが、幸い彼は祖母のDVD鑑賞につき合わされている。も以前に見た事がある米国製のドラマで、第一級殺人罪の迷宮入りした事件を女刑事を中心としたメンバーが解決していく話だった。
そしてシドもまた、同一会社で製作された別のドラマの登場人物であり、以前それを見たは彼の眼鏡に一目惚れをしていたのだ。
無論その事はリドルには秘密だ。どうにもが好き過ぎるらしいリドルは、例え架空の人物や物質でも目を奪われると腹を立てるのである。有機物どころか無機物にまで嫉妬するのは彼を知る人物からすると流石としか言い様がない。
「仕方のない人」
ネット上での注文を終えるとパソコンの電源を切り、上機嫌に縁側を歩く。
注文した眼鏡は運良く在庫があったので手元に届くまで何日もかからない、に眼鏡属性はないが眼鏡を掛けたリドルを想像すると今から胸が高鳴った。
そんな想いは数日続いてやっと念願の眼鏡が届いたその日、は連日長時間刑事ドラマを見せられた所為でぐったりとしているリドルを早々に救出して、プレゼントと称して眼鏡を手渡した。
数日前からの機嫌が良かったのは判っていたが、まさか自分のプレゼントを用意したからだとは思ってもみなかったらしいリドルは、感極まった表情でを抱き締める。
「ありがとう、。私の為に選んでくれたのか?」
「うん。それより掛け心地はどう? ちゃんと見える?」
「ああ。魔法薬で治そうと思ったが、お前が眼鏡を選んでくれたのなら話は別だ。それに」
「それに?」
「キスをする時に態々眼鏡を置く必要性がないというのは、マグルにしては上出来の機能だ」
カチリ、とフロントのマグネットを外し首から下げる仕種に見惚れ、素顔でキスを仕掛けてきたリドルにうっとりとした表情で応えた。
長いキスの合間に幼い手で握り潰された一枚の紙、歪んでしまったその診断書には小さな文字で老視と書かれていた事を、リドルは知らない。