君の悩みはいつだって僕を狂わせる
広島焼きはうどんか縮れ麺か、とか、そういった悩みではなく、純粋な悩みのようだ。
「……あのさ」
「うん？」
「おれたち、付き合ってるんだよな」
「勿論」
何を悩んでいたかと思えば、どうやら恋人であるおれに関係のある悩みらしい。
おれたちにとっては純粋だけど、一部の大人たちにとってはきっと、不純と言えば不純な悩みだろう。
学生の身分で、男同士。世の中広いんだ、探せばこういったカップルだって居るさ。
「でもさ、。お前……巨乳好きだろ」
「世の男の大多数は巨乳の女性は正義と言うぞ」
稀に貧乳好きな男も存在するらしいけど、おれは断然巨乳が好きだ。巨乳というジャスティスは色気のない衣装でも優れた破壊兵器（主に理性や下半身対象）になる。
おれ的には出来ればスイカみたいにデカい胸が理想だ。いっそ胸だけでシャツのボタンが弾け飛べばいいとすら思う。一生に一度でいいからその瞬間、いや奇跡を見てみたい。
「おれは別に巨乳は好きじゃない」
「あ、貧乳好き？」
こんな所に少数派発見。大丈夫、好みが違うからって迫害なんてしないから。
「違う！」
「じゃあBカップくらいが理想なのか？」
「そうじゃなくて！ 何で、巨乳好きなのに、おれと付き合ってるのか、とか……」
窄まっていく声。
まあ、あれだ。終は男だ。当然胸なんてものはない。というか、あるけれど、ボリュームがない。存在しない。
単語通りの胸板だ。
どうにもおれの恋人は、生物学的にどうしようもない事で悩んでいるらしい。割と真性のアホだ。
「じゃあ、こうしよう。終」
「どうするんだよ」
「おれが毎日揉んで大きくしてやるよ」
そう言うと、終の顔がみるみる朱に染まる。
口を鯉みたいにパクパクさせて、何も言わずに俯いてしまった。
「あのな、終。ここの模範解答は照れる事じゃなくて、おれを『何この変態。死ねよ』と冷めた目で見下す行為を求められたんだけど」
胸を揉まれる事を割と期待している恋人が面倒くさくなって溜息を吐く。
しかし言ってしまったものは仕方がないので、早速今からこいつの胸と尻を揉んでやる事にしよう。